元国営公社という強みで民営化後も業界優位に立つNTT(日本電信電話株式会社)。先日、グループのNTTドコモは携帯電話の一部が通信障害を起こしたことで山田隆持社長が謝罪会見を行なった。しかし、グループ幹部連中の“障害”ぶりは既に意外な形で明らかにされていた。

 NTTグループ幹部たちの異常な“趣味”が明らかになった。NTTドコモの山田隆持社長ら現役の幹部と関連企業に天下りなどした元幹部のOBらが、長年にわたって賭けゴルフと賭け麻雀を堪能する例会を頻繁に開催し、「禁じられた遊び」にふけっている。しかもその中心人物が、自らの違法行為をメディアで自慢までしていたのだ。 「いったい、あの記事がどうして書かれたのか。あんなことを公言するなんて信じられないと関係者の間で話題になっていた」

 NTT関係者がこう語って首を傾げたのは、昨年一〇月、情報通信業界紙の『テレコム・レビュー』(「逓信」発行)が、一面全体で大々的に報じた記事だった。  この業界紙は、NTTグループやKDDIなど情報通信企業や関連企業のほか、情報通信行政に関わる省庁や政界などで読まれている月刊紙で、発行部数は公称一万部。一般的な知名度はないが、関係者には注目されてきたメディアだ。

■「ゴルフを100倍楽しむ」

 日ごろは業界のトピックなど伝えているお堅い業界紙が昨年一〇月一五日号で唐突に掲載した記事の大見出しは、「ゴルフを100倍楽しむ法」。サブの見出しは「大評判 三原種昭(大明相談役)の『ベット集』」だった。

 その内容は、「広くNTT関係者の間」で、一五年前に賭けゴルフと賭け麻雀を徹底的に楽しむ目的で「MG会」と呼ばれる親睦会が自然発生的に生まれ、以後、年に五、六回も泊りがけの例会が開催され続けている、というものだった。

 そのゴルフで重宝されているのが「MG会の推進者」で「NTTグループ切ってのアイディアマン」とされ、現在はグループ傘下の関連企業「大明」に在籍している三原相談役の作成した独自のにぎり(賭け)ルール集なのだという。

 三原氏は、日本電信電話公社に入社し、後のNTTで常務にまで上り詰めた。その後、現在のNTTコムウェアの前身であるNTTコミュニケーションウェアの社長を務め、さらに大明の社長に天下りして、今は相談役となっている。

 いわば大物OBの三原氏は、記事中で「ゴルフは楽しくなければゴルフではない。 くそ真面目にスコアだけを気にしないで、 はち切れんばかりのベットを持ちこんでアフタープレーの場を盛り上げるのが醍醐味だ」と胸を張り、 自分が作成した「にぎり」のルール集について自慢げに解説している。

■「賭博性を高めた」ルール

 たとえば、自信作というルールでは、ショート4ホールで一度もワンオンしなかった場合、 「バイアグラ」というペナルティを受ける。なぜなら「旗竿が立ちっ放し」だからだ。また、グリーン周りのバンカーから一打で乗せられないと、「乗らないで出すだけ」という意味で「ソープランド」のペナルティが科される。一般的にも知られる「オリンピック」を、三原流にアレンジして「博打性を高めた」ルールもあるという。

 賭けのレートは不明だが、あるNTT関係者は「部長クラスでにぎる時、一つのペナルティは一〇〇〇円くらい。役員ならもっとレートが高いのでは」と話す。仮にレートが一万円ならば一〇万単位の勝ち負けになるだろう。

 MG会のメンバーは、現役幹部とOBがほぼ半分で総勢約一〇〇人。 例会は沖縄を含む全国各地で行なわれる。出身地や所属先で東西に分かれ、 関ヶ原に近い名古屋で行なわれる東西対抗戦には、ドコモの山田社長も「欠かさず参加」しているという。

 このほか紙面では、NTT西日本の伊東則昭副社長や、 NTTドコモの元副社長で現在は関連企業「協和エクシオ」の石川國雄社長、NTT元常務で、 現在は「古河電工」の石原廣司会長ら一〇人ほどが、中核メンバーとして紹介されている。

 言うまでもないが、賭けゴルフや賭け麻雀は刑法一八五条の賭博罪にあたる違法行為だ。 NTTの幹部やOBたちが違法な例会を組織的に開催し、それを当事者が自慢げに公表するなど常識的には考えられない異常な状況といえるだろう。